子どもの受け口(反対咬合)はいつから相談する?|鴻巣市の小児歯科が根拠とともに解説
下の前歯が上より前に出ている「受け口」。当院が就学前でも一度見せていただきたいとお伝えしている、数少ないもののひとつです。その理由を、学会の資料や研究報告とあわせて整理しました。
「3歳児健診で受け口と言われました」「下の前歯が上より前に出ているようです」——鴻巣市のはぎわら歯科こども歯科クリニックにも、こうしたご相談が届きます。受け口は、当院が就学前でも一度見せていただきたいとお伝えしている数少ないもののひとつです。その理由を、根拠とあわせて整理します。
受け口(反対咬合)とはどんな状態でしょうか
軽く噛み合わせたときに、下の前歯が上の前歯より前に出ている状態をいいます。日本小児歯科学会は、3歳児健診での反対咬合を「前歯部の連続した3歯以上の逆被蓋」と定義しています。1〜2本だけ逆になっているものは、これとは区別して扱われます。
どのくらいのお子さまに見られるのでしょうか。国内の未就学児1,702人の歯型を調べた調査(2024年報告)では、反対咬合の割合は次のように報告されています。
- 3歳 4.1%/4歳 2.5%/5歳 3.3%/6歳 5.7%
- 5歳・6歳では、叢生(歯のでこぼこ)に次いで2番目に多い
別の全国調査(3歳半・820人)では7.3%という報告もあります。数値に幅があるのは、判定の基準が研究ごとに違うためです。いずれにしても、めずらしいものではありません。
「そのうち治る」と言い切れないのが、いちばんの理由です
日本人のお子さん61名を3歳ごろから7歳半ごろまで追跡した報告(1999年)では、次のように報告されています。
- 乳歯の時期に自然に改善した:約18%
- 永久前歯に生えかわるときに改善した:約16%
- 改善しなかった(反対咬合のまま):約66%
小規模で古い研究ですので、数字そのものは幅をもって見る必要があります。それでも自然に改善するお子さまがいる一方で、残るお子さまのほうが多かったという点は、知っておいていただきたいところです。
同じ報告では、上あごの育ちが良いお子さまで自然改善が起きやすく、頭に対して下あごが大きいお子さまでは起きにくかったとされています。ただし日本矯正歯科学会のガイドラインは、「現時点で下顎骨の成長を予想できる因子は不明であり、予後の予測は極めて困難」と明記しています。「様子を見る」を選ぶ場合も、見ながら確認していくことが前提になります。
あごの成長には、使える期間があります
もうひとつの理由が、時間の制約です。日本矯正歯科学会のガイドライン(2020年)には、次のように記載されています。
- 上あごの成長は10〜12歳ごろにほぼ終わるのに対し、下あごの成長は男女差はあるものの15〜18歳ごろまで続く
- 上あご周囲の縫合がまだ未熟な若い時期のほうが、治療には有利ではないかと示唆されている
上あごと下あごで、成長が終わる時期がずれている——ここが受け口をむずかしくしている点です。上あごに働きかけられる期間には限りがあり、早い時期ほど、選べる方法が多く残っていることになります。生えかわり全体の流れは生えかわりと矯正相談のコラムにまとめました。
ただし「早く始めれば必ず解決する」ではありません
ここは正直にお伝えしたいところです。国際的な系統的レビュー(2024年更新)では、装置を用いた治療について次のように報告されています。
- 治療直後は、噛み合わせと上下のあごの位置関係が明らかに改善した(中等度の確実性)
- その差は3年後には小さくなり、6年後には統計的な差として確認できなくなった(1つの研究のみ・確実性は低い)
- 一方で6年後、将来手術が必要と判断された割合は、治療を受けた側で少なかった(確実性は低い)
日本矯正歯科学会のガイドラインでも、上あごを前方に導く装置や機能的な装置の推奨は「弱く推奨する」という強さにとどまります。さらに同ガイドラインには、成長期に治療をしても最終的に外科的な治療が必要になる方が一定数いること、成長期には介入せず、成長が終わってから保険適用となる治療を受けたほうが心身・経済的な負担が少ない場合もあることも書かれています。
受け口だからといって、全員がすぐ装置を使うわけではありません。当院がお伝えしたいのは「早く治しましょう」ではなく、「早く見きわめて、いっしょに経過を追いましょう」ということです。
早期治療をめぐる考え方と、当院の立場
ここまでお読みになって「では、待ったほうがよいのでしょうか」と感じられたかもしれません。実はこの点は、専門家のあいだでも考え方が分かれるところです。
矯正歯科の領域では、幼少期に整えても思春期の成長で戻る可能性が残るのなら、成長が終わってから対応しても結果は大きく変わらないのではないか、という考え方が示されることがあります。前の章でご紹介した研究の結果は、この見方を支える材料のひとつであり、筋の通った考え方だと思います。
そのうえで、小児歯科を専門とする立場から、当院は次のように考えています。これは当院の考え方であり、すべての歯科医師に共通する見解ではありません。
最終的に同じ場所にたどり着くとしても、噛み合わせが整った状態で成長期を過ごせること自体に意味があると考えています。日本矯正歯科学会のガイドラインでも、反対咬合では咀嚼の効率や下あごの動き、発音への影響、見た目に関する自尊心の低下、からかいの対象になりやすいことなどが報告されているとされています。食べること、話すこと、呼吸のしやすさ、そして思春期にさしかかる時期の心理的な負担——この時期をどう過ごすかは、あとから取り戻しにくい部分だと、日々の診療のなかで感じています。
二次性徴の時期に後戻りする可能性が残ることは、当院も理解しています。それでも「戻るかもしれないから、いまは何もしない」ではなく、戻る可能性を織り込んだうえで、成長を追い続けながら関わる——それが当院の選んでいる立場です。もちろん、待つという判断が適している場合もあります。どちらが正しいというより、お子さまの状態とご家族のお考えをうかがったうえで、いっしょに決めていくものだと考えています。
当院での進め方
検査と診断の結果によって、大きく次のように使い分けています。
- 軽度なもの・歯の傾きによるもの:やわらかい材質の、取り外し式のマウスピース型装置を中心に
- 骨格によるもの・中等度以上のもの:上あごを前方に導く装置を基本に
- いずれの場合も、舌の位置や飲み込み方、口まわりの筋肉を整える口腔筋機能療法(MFT)をあわせて行います
装置だけで整えても、お口の使い方がそのままでは戻りやすくなります。装置と機能の両輪で進めるのが当院の基本です。なお当院の小児矯正は自由診療(保険適用外)です。装置を使うあいだは痛みや違和感が出ることがあり、取り外し式のものはご本人の協力が必要になります。また、期待した変化が得られない場合や、成長にともなって後戻りする場合もあります。費用・期間・回数と想定されるリスクは検査結果をもとに個別にご説明しますので、目安は料金の目安をあわせてご覧ください。
まずは、どのタイプかを見きわめます
受け口の成り立ちは、大きく3つに分けて考えられています。
- 骨格性:上あごが後ろぎみ、下あごが前ぎみ、またはその両方によるもの
- 歯性:歯の傾きや位置によるもの
- 機能性:どこかが先に当たることで、下あごが前に誘導されているもの
日本矯正歯科学会のガイドラインは、多くは複数の要因が複合しているとし、骨格性のものとそれ以外を区別することは診断や治療方針を決めるうえで非常に重要だとしています。骨格性のものには遺伝的な要因が大きく関与し、家族内での集まりが認められると報告されています。また下あごの成長は思春期の成長が終わるまで続くため、いったん整ったあとに再び反対咬合になることもある、とも記載されています。
見た目だけでタイプを判断することはできません。お口の中の状態やあごの成長を見ながらご説明していますので、小児矯正のページもあわせてご覧ください。
3歳児健診で指摘されたときは
日本小児歯科学会は、3歳児健診はふるい分け(スクリーニング)であり、該当した場合は母子健康手帳に「経過観察」と記載したうえで、かかりつけ歯科医をもち、適切な時期や生活習慣について相談することを勧める、としています。
つまり指摘された=すぐ治療開始、という意味ではありません。同時に「そのままでよい」と決めつけるものでもなく、相談のきっかけと受け取っていただくのがよいと考えています。
まとめます。
- 受け口は3歳で約4%、6歳で約5.7%と報告されており、めずらしくありません
- 日本人を追跡した報告では、約3分の2が自然には改善しませんでした
- 上あごの成長は10〜12歳ごろまで。早い時期ほど選べる方法が多く残ります
- 一方で、早く始めれば必ず解決するわけではなく、学会の推奨も「弱く推奨」です
- 早期治療の是非は専門家でも考え方が分かれます。当院は戻る可能性を織り込んだうえで関わり続ける立場です
- まずはタイプの見きわめから。当院は就学前でも一度ご相談くださいとお伝えしています
歯並びの成り立ち全般は歯並びが悪くなる原因のコラム、気になる点の確認はお口の育ちセルフチェックをご覧ください。はじめての受診にご不安のある方ははじめての方へもどうぞ。
よくあるご質問
3歳児健診で受け口と言われました。すぐ治療したほうがよいですか?
「指摘された=すぐ治療開始」ではありません。日本小児歯科学会は、3歳児健診はふるい分け(スクリーニング)であり、該当した場合は母子健康手帳に「経過観察」と記載したうえで、かかりつけ歯科医に適切な時期や生活習慣を相談することを勧める、としています。
ただし受け口は、当院が就学前でも一度見せていただきたいとお伝えしている例外です。まずは骨格によるものか、歯の傾きや噛み合わせのあたり方によるものかを見きわめるところから始めます。その結果「いまは経過を見ましょう」となることも、ごく普通にあります。
受け口は自然に治ることがありますか?
自然に改善するお子さまもいらっしゃいます。日本人のお子さん61名を3歳ごろから7歳半ごろまで追跡した報告(1999年)では、乳歯の時期に約18%、永久前歯に生えかわるときに約16%が改善した一方、およそ3分の2は反対咬合のままだったとされています。小規模で古い研究のため数字は幅をもって見る必要がありますが、「必ず治る」とも「絶対に治らない」とも言えないのが実際のところです。
また、どのお子さまが改善するのかを事前に見分ける確かな方法は、いまのところ確立されていません。日本矯正歯科学会のガイドラインも、下あごの成長を予想できる因子は不明で予後の予測は極めて困難である、としています。ですから「様子を見る」場合も、見ながら確認していくことが前提になります。
何歳ごろに相談すればよいですか?
受け口の治療をいつ始めるべきかについて、公的に定められた基準はありません。そのうえで、上あごの成長は10〜12歳ごろにほぼ終わるとされ、あごの成長を利用できる期間には限りがあります。そこで当院では、受け口に気づいた時点でご相談いただくことをおすすめしています(これは当院の考え方です)。就学前でも構いません。
ご相談いただいても、その場で装置を使い始めるとはかぎりません。詳しくは矯正を始める時期をご覧ください。
受け口の治療に健康保険は使えますか?
お子さまの小児矯正は、多くの場合は自由診療(保険適用外)となります。費用や期間の目安、想定される負担については料金の目安にまとめていますので、ご確認ください。
なお日本矯正歯科学会によると、厚生労働大臣が定める疾患に起因する咬合異常や、顎離断等の手術を必要とする顎変形症の手術前後の矯正歯科治療などは、所定の施設基準を届け出た医療機関で行った場合に健康保険の対象になるとされています。該当するかどうかは診断によりますので、まずは診察の際にご相談ください。また、成長を阻害しないために必要と認められる歯列矯正は医療費控除の対象になるとされています(国税庁)。
本コラムは一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の治療の効果や結果を保証するものではありません。症状やお口の状態には個人差があります。気になる症状がある場合は、自己判断せず歯科医院にご相談ください。
お子さまのお口のこと、気軽にご相談ください
鴻巣市のはぎわら歯科こども歯科クリニックでは、小児歯科・予防矯正・口腔育成を通じて、お子さまの健やかな成長をサポートしています。まずはお口の状態をチェックしてみませんか。


