子どものおやつは回数がポイント|0〜3歳で親が決めたい時間と量
「おやつ、これでいいのかな」——鴻巣市のはぎわら歯科こども歯科クリニックにも、よくいただくご相談です。0歳から3歳のおやつを特別に考えたい理由は、ふたつだけ。「回数」と「時間と量の決め方」にしぼってお伝えします。
1歳半ではほとんどいないむし歯が、3歳では10人に1人
乳幼児健診でむし歯が見つかったお子さまの割合は、1歳6か月児で0.8%、3歳児で10.2%です(令和3年度 地域保健・健康増進事業報告)。1歳半ではほとんどいないのに、3歳では10人に1人。この1年半に、何が起きているのでしょうか。
ちょうどこのころ、離乳食が完了して「おやつ」が始まります。離乳食そのものの進め方は離乳食の進め方と口の育ちをご覧ください。
全国調査では、2歳から3歳未満の41.9%が、甘い飲み物やお菓子を1日2回以上とっていました。5歳以上は28.9%ですから、年齢が低いほど回数は多いことになります(厚生労働省 平成27年度 乳幼児栄養調査)。
0〜3歳のおやつを特別に考えたい理由は、ふたつだけです。ひとつは歯の側の事情、もうひとつは決める人の事情。順にお話しします。
ひとつめの理由|この時期は「生えたての歯」ばかりです
0歳から3歳は、乳歯が次々に生えてくる時期です。お口の中に、生えたばかりの歯ばかりが並びます。
国の支援ガイドにも「萌出間もない歯はエナメル質や象牙質が未熟」「幼児期の年齢によるむし歯の好発部位は、歯の萌出時期と関連しています」とあります(幼児期の健やかな発育のための栄養・食生活支援ガイド・令和4年3月)。乳歯のエナメル質は永久歯より薄いとされ、生えて間もない歯はむし歯になりやすいことも知られています。
ただし、こうした研究の多くは永久歯で行われています。生えてしばらくは歯の表面が育ちきっていない時期がある、と考えられている段階です。何年で育ちきる、という数字までは、まだはっきりしていません。
大切なのは、これがいまだけの一時的な条件だということです。生まれつき歯が弱い、という意味ではありません。だからこそ、この数年だけ少し手をかける値打ちがあります。
ふたつめの理由|おやつを決めているのは、おとなです
0〜3歳のお子さまは、自分で買いに行けませんし、袋も開けられません。この時期のおやつは、ほぼおとなが決めています。裏を返せば、変えられるところはすべてご家庭の側にあるということです。
ここからは、全国11都府県の保育園などに通う2〜6歳児の保護者2,904人への調査を手がかりにします(令和元年度 厚生労働科学研究費補助金 分担研究報告書・堤ちはるほか)。横断調査ですので、原因と結果を示すものではありません。
0〜3歳は、いちばん気をつけられている時期です
「甘いものは少なくしている」と答えた方は、2歳で27.4%、6歳では11.3%。年齢が上がるほど、手はゆるんでいきます。裏返せば、0〜3歳は保護者の方がいちばん気をつけられている時期です。いま整えた形は、そのまま続けやすくなります。
下のお子さまのご家庭は「時間を決める」のがお上手です
「スナック菓子を与えない」は、第1子12.8%、第2子7.2%、第3子以降6.3%。年の離れた兄姉がいると、下のお子さまは早くからお菓子に触れます。これは、多くのご家庭で避けようのないことです。
ところが「時間を決めている」のほうは、第1子35.6%に対して第3子以降42.8%とむしろ上がります。下のお子さまのご家庭は、時間を決めるのがお上手なのです。
そのうえで、当院でよくうかがうお話があります。上のお子さまがおやつを食べていると、下のお子さまもいっしょに食べてしまう、というものです。上の子には1日1回でも、下の子にとっては予定になかった1回が増えます。生えたての歯がそろっている時期に、いちばん重なってほしくない形です。
できることは、ふたつあります。ひとつは、上のお子さまのおやつを、下のお子さまと重ならない時間にすること。もうひとつは、いっしょに食べるなら少し分けても1回で終われる形にそろえることです。同じ時間にいっしょに食べ終えるのなら、下のお子さまにとっても回数は1回のままです。
上のお子さまのおやつを見直すことが、そのまま下のお子さまを守ることになります。おやつの時間は、家族みんなで取り組む予防歯科だと考えていただけたらと思います。
まわりの大人は、悪者ではありません
祖父母と同居のお子さまでむし歯の経験がやや多い、という日本の大規模研究はあります(東京都足立区の小学1年生3,578人・Scientific Reports 2019)。ただし対象は小学1年生で、その差はご家庭の状況といった別の要因で説明できる可能性が示されています。「祖父母がお菓子をあげるからむし歯になる」とは言えません。
先ほどの2,904人の調査では、「特に気をつけていない」が、経済的にゆとりのある層で14.0%、まったくゆとりのない層で28.6%でした。気をつけたくないのではなく、余裕がないほど手をかけるのが難しくなるのだと思います。ですから当院は、やることを増やす提案はしません。
日本口腔衛生学会は令和5年8月31日の声明で「食器の共有をしないことでう蝕予防できるということの科学的根拠は必ずしも強いものではありません」と述べています。分ければ防げるとも、まったく影響しないとも言い切れませんが、そこに大きな労力は要りません。そのぶんは仕上げみがきとフッ化物へ回してください(仕上げ磨きのコツと卒業の目安)。
なお、おやつの中身や量のご相談は、お口の話と切り分けられます。当院には歯科医師・歯科衛生士に加えて栄養士もおり、食べることのご相談もお受けしています(離乳食・口腔育成のご相談)。
では、むし歯の差はどこに出ていたのか
ふたつの事情を見たところで、実際にむし歯のあるお子さまとないお子さまで何が違っていたのか、調査の中身に入ります。
先ほどの乳幼児栄養調査には、むし歯のあるお子さま503人と、ないお子さま2,112人の比較があります。意外に思われるかもしれませんが、「スナック菓子を与えることが多い」は、あり15.5%・なし15.8%とほとんど差がありませんでした。
はっきり差が出たのは、与え方のほうでした。
- 時間を決めてあげることが多い……むし歯あり46.1% / なし58.7%
- 欲しがるときにあげることが多い……むし歯あり27.2% / なし19.1%
つまり差は「何をあげたか」ではなく「どう与えたか」に出ていました。ただしこちらも横断調査ですので、原因と結果を示すものではありません。
1歳半から3歳まで追いかけた研究でも
徳島県のある市で、1歳6か月でむし歯がなかった560組を3歳まで追いかけた研究があります。3歳でむし歯のあった割合は、間食が1日3回以上の群で28.4%、2回以下の群で12.0%でした(四国公衆衛生学会雑誌 2025・坂本治美ほか)。統計の上でも、間食の頻度がもっとも強く関連していました。ただし1つの市での研究で、ご家庭の経済状況などは調整されていません。
回数が効いてくる理由|溶け出す時間と、戻る時間
歯の表面では、毎日ふたつのことが起きています。食べたり飲んだりするとお口の中が酸性に傾き、歯からミネラルがすこしずつ溶け出します。これを脱灰(だっかい)といいます。そのあとだ液がはたらいて酸をうすめ、溶け出したミネラルを歯に戻していきます。こちらは再石灰化(さいせっかいか)です。
むし歯は、ある日とつぜん穴があくものではありません。この溶け出す時間と戻る時間のうち、溶け出すほうにかたむいた状態が積み重なったときにできてきます。ですから大切なのは、戻るための時間をきちんと残してあげることです。
診療室で保護者の方にお伝えしているたとえ話があります。クッキーを5枚食べるとします。おやつの時間に5枚まとめて食べるのと、1枚ずつ、5回に分けてあげるのと。歯にとって負担が大きいのは、後者です。
食べた量は、どちらもまったく同じ5枚です。ちがうのは、回数だけです。
お口の中の酸性・中性の度合いは、pHという数字であらわします。ふだんは中性に近いのですが、食べはじめると数分で下がり、pH5.5前後(臨界pH)を下まわったあいだだけ、歯からミネラルが溶け出します。もとの高さまで戻るには、しばらく時間がかかります。図で色をつけたところが、その「溶け出しやすい時間」です。
上の図で見ていただきたいのは、深さではなく幅のほうです。①も②も、その日に食べたものは同じです。ちがうのは、まとめて食べ終えたか、少しずつ分けてあげたかだけです。それでも色のついた部分は大きく変わります。回数が増えると、まだ戻りきらないうちに次の一口が入るため、戻るための時間がどんどん削られていくのです。だらだら食べや、水筒に甘い飲み物を入れて少しずつ飲むことが心配されるのも、同じ理由です。
ここが、いちばん誤解されやすいところだと感じています。「少しずつなら平気かな」という安心感こそが、いちばんのリスクです。歯の側から見ると、「少しずつ」は酸性の時間を細切れに何度もつくることになります。量をおさえているつもりでも、歯にとっての負担はむしろ増えています。
もうひとつ、あまり知られていないことがあります。pHが下がるのは甘いものだけではありません。おせんべいやパン、いもなどのでんぷん質でも下がります。「甘くないから安心」とは言いきれない、ということです。逆に、お茶やお水なら回数が増えても、この形にはなりません。
もちろん量も関わりますし、量と回数のどちらがより重要かは、まだ決着していません。ただ低年齢では、回数のほうがご家庭で調整しやすいものです。国の支援ガイドでも「食事は1日3回となり、その他に、必要に応じて1日1〜2回の間食が目安」「時間と量を決めて与える」とされています。
知らないうちに2回になっていることがあります
先ほどの2,904人の調査では、間食の時刻は「午後のおやつ(15・16時台)」が63.7%、「降園後(17・18時台)」が66.6%と、二重に立っていました。どちらも「1回」のつもりでも、合わせれば2回です。まずは1日に何回あるかを数えてみるところからで十分です。
この区切りは、ある自治体の乳幼児歯科健診で使われている判定基準の一例です。回数だけで良し悪しが決まるわけでもありませんので、数字にしばられすぎないでください。
今日からできる、たったひとつのこと
ひとつだけやるなら、おやつの時間と量を、おとなが決めて渡すことです。
- 袋ごと渡さず、お皿に出した分で終わりにする
- あげる時間を先に決めておき、その時間に出す
- ほしがったときは、次の時間まではお茶やお水にする
声のかけ方を工夫することよりも、時間と量をおとなの側が持っていることが大切です。お子さまが自分で終わりにできるようになるのは、もっと先のことです。回数を減らそうと身構えなくても、1回ずつの区切りがはっきりしていれば、回数は自然とまとまっていきます。
果物とヨーグルトの位置づけ
WHOは糖の目標を示すとき、「遊離糖」という区切りを使っています。
- 生の果物そのものの糖は、遊離糖に含まれません(無糖の乳製品も同じ扱いです)
- 果汁は、100%のものであっても遊離糖に含まれます
- ドライフルーツは、国際的にも扱いが定まっていません
冷凍した果物や無糖のヨーグルトは、糖の観点では選びやすいものです。ただし「これならむし歯にならない」わけではありません。回数が多ければ同じことです。
手作りでなくて大丈夫です
手作りのおやつを用意できているご家庭は、先ほどの調査で2〜3%ほどでした。できる日に、できる範囲で十分です。市販のお菓子がいけないわけでもありません。見ていただきたいのは「終わりが決まっているか」だけ。小分けになっているものは、終わりをつくりやすいと思います。
体重や栄養のバランス、食べる量についてのご心配は、小児科の先生や管理栄養士にご相談ください。歯科医院がお話しできるのは、お口の中で起きていることです。
受診の目安は、歯が生えてきたら一度、あとは健診のタイミングで構いません。
まとめ
- むし歯は1歳6か月児で0.8%、3歳児で10.2%。この1年半に、おやつが始まります
- ひとつめの理由は歯の側。0〜3歳は生えたての歯ばかりで、体質の話ではありません
- ふたつめの理由は決める人。この時期のおやつは、ほぼおとなが決めています
- 調査で差が出たのは「何をあげたか」より「どう与えたか」でした
- 量も回数も関わりますが、低年齢では回数のほうが調整しやすいものです
- 上のお子さまのおやつが、下のお子さまの「もう1回」になっていないか見てみましょう
- 今日からはひとつだけ。おやつの時間と量は、おとなが決めて渡しましょう
おやつに、ひとつだけの正解はありません。ご家庭の形に合わせて、続けられるところから整えていけば十分です。当院の小児歯科は0歳から診ていますので、気になることがありましたら小児歯科の診療のページもご覧ください。
よくあるご質問
おやつは1日何回までにしたほうがいいですか?
全国一律の決まりはありません。国の支援ガイド(幼児期の健やかな発育のための栄養・食生活支援ガイド)では「食事は1日3回となり、その他に、必要に応じて1日1〜2回の間食が目安」とされています。自治体の乳幼児歯科健診では1日3回以上の間食をリスクのひとつとして扱っている例もありますが、これは判定基準の一例であって全国の基準ではありません。また、回数だけでなく量も関わりますし、食べる量や生活リズムには個人差があります。ご家庭のリズムに合う形は健診の際に一緒に考えられますので、お気軽にご相談ください。
果物やヨーグルトなら、むし歯にならないでしょうか?
生の果物そのものに含まれる糖は、WHOのいう「遊離糖」には含まれません。無糖の乳製品も同じ扱いです。その意味では、冷凍した果物や無糖のヨーグルトは選びやすいものといえます。ただし「これならむし歯にならない」ということではなく、回数が多ければ同じことです。なお果汁は、100%のものであっても遊離糖に含まれます。ドライフルーツについては、国際的にも扱いが定まっていません。種類で安心するよりも、1回ずつの終わりを決めることのほうを大切にしていただければと思います。
おじいちゃん・おばあちゃんがお菓子をくれるのですが、やめてもらったほうがいいですか?
やめていただく必要はないと考えています。祖父母と同居しているお子さまでむし歯の経験がやや多い、という日本の大規模な研究(東京都足立区の小学1年生3,578人・Scientific Reports 2019)はありますが、対象は小学1年生ですし、その差はご家庭の状況といった別の要因で説明できる可能性が示されています。同居やお菓子をもらうこと自体が原因とは言い切れません。だれかに我慢していただくよりも、「おやつはこの時間に、この分で終わり」という形を家族みんなで共有するほうが、無理なく続けられます。
本コラムは一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の治療の効果や結果を保証するものではありません。症状やお口の状態には個人差があります。気になる症状がある場合は、自己判断せず歯科医院にご相談ください。
お子さまのお口のこと、気軽にご相談ください
鴻巣市のはぎわら歯科こども歯科クリニックでは、小児歯科・予防矯正・口腔育成を通じて、お子さまの健やかな成長をサポートしています。まずはお口の状態をチェックしてみませんか。


