口腔育成 公開 2026.07.22

離乳食の進め方と口の育ち|前歯かじり取りとスプーンの当て方が大切なわけ

「もうすぐ5か月、そろそろ離乳食を始める時期かな」「なかなか食べてくれなくて不安…」。離乳食は栄養だけでなく、お子さまの口の育ちにも大きく関わっています。この記事では、口腔発達の視点から離乳食の進め方のポイントをやさしくご紹介します。

スプーンで離乳食を食べる赤ちゃんと見守る保護者のやさしいイラスト

離乳食は、赤ちゃんが初めて「食べ物をロで受け取り、飲み込む」という体験をする大切な時期です。栄養を補う役割はもちろんですが、噛む力・舌の使い方・唇の力を育てる「口のトレーニング期間」でもあると考えられています。鴻巣市のはぎわら歯科こども歯科クリニックでは、食べる機能の育ちをサポートする口腔育成の観点から、赤ちゃんのお口の発達にあわせた関わりをご案内しています。

月齢別の進め方と口腔発達の目安

離乳食には大きく4つのステップがあり、それぞれで赤ちゃんの口腔発達のポイントが異なります。厚生労働省の「授乳・離乳の支援ガイド」(2019年改定)でも示されているとおり、月齢はあくまで目安であり、お子さまの様子に合わせて進めることが大切とされています。

「月齢」ではなく「お口の発達段階」から逆算して選ぶ

お子さまのお口の発達には個人差があります。月齢通りに進んでいる場合もあれば、少しゆっくりな場合もあります。大切なのは、カレンダーの月齢をもとに食形態を決めるのではなく、まず各発達段階のお口の基準(舌の動き・上あごとの協調・歯ぐきの使い方など)を知り、お子さまのいまのお口の状態がどの段階にあるかを確認したうえで、そこから逆算して適切な食形態を選ぶことです。「うちの子はどの段階なの?」と判断が難しいと感じたときは、小児歯科などの専門家にご相談いただくことをおすすめします。

離乳初期(生後5〜6か月頃/ゴックン期)

なめらかにすりつぶした状態の食べ物を、舌と上あごで受け取り「飲み込む」練習をする時期です。生まれつきある哺乳反射(スプーンを入れると舌で押し出す反射)が少しずつ消えてくるのがこの頃で、口が開いてスプーンを受け入れる様子が見えたら、離乳食の準備が整ってきたサインとされています。

離乳中期(生後7〜8か月頃/モグモグ期)

舌を上下に動かして、食べ物を上あごに押しつけてつぶす練習をする時期です。上下の前歯が生え始める頃で、舌と上あごの働きが育ちはじめます。豆腐程度の固さを目安に、舌でつぶせる食形態が適しているとされています。

離乳後期(生後9〜11か月頃/カミカミ期)

上下の前歯がそろい始め、前歯でかじり取る動きが育ってくる時期です。バナナ程度の固さで、歯ぐきで砕ける食形態が目安とされています。この時期に「かじり取り」をしっかり経験することが、口の育ちを支えると考えられています(詳しくは次の章でご紹介します)。

離乳完了期(生後12〜18か月頃/パクパク期)

奥歯が生え始め、「自分でかんで食べる力」が育つ時期です。幼児食に移行しながら、自分で食べる楽しさを体験する大切な段階です。急ぎすぎず、お子さまの口の発達に合わせてゆっくり進めることが大切とされています。

「前歯でかじり取る」経験がなぜ大切なのか

生後9か月頃から始まる「かじり取り」は、口腔機能の発達においてとても大切な動作とされています。前歯で食べ物をかみ切る経験を通じて、いくつかの大切な力が育つと考えられています。

  • 一口の量を自分で調節する力が育つ——かじって食べ物を切り取ることで、口の中に入れすぎないコントロールが自然に身につきます。
  • 顎や口周りの筋肉への刺激になる——前歯で噛む動きが、顎の骨や口周りの筋肉の発育を促すとされています。
  • 「かじる→もぐもぐ→飲み込む」というパターンが形成される——正しい食べ方のリズムが育ちます。

かじり取りの練習には、やわらかくゆでたにんじんや大根のスティック野菜など「前歯を使わないと食べられない形・大きさ」の食材を取り入れてみるとよいといわれています。また、手づかみ食べと組み合わせると、自然と前歯を使う経験ができます。

手づかみ食べも口の育ちに大切です

「散らかるから」と手づかみ食べをさせない場合もありますが、自分の手で食べ物を持って口へ運ぶ経験は、一口量の調整や口腔機能の発達を促すとされています。多少散らかっても、大切な発達の場として見守ってあげましょう。

お口の育ちが気になるときは、お口の育ちセルフチェックもご活用ください。「かじり取りができているかな」「口がうまく閉じているかな」といった様子を確認する目安になります。

スプーンの当て方・食べさせ方のポイント

離乳食の食べさせ方で、意外と見落としがちなのがスプーンの使い方です。正しい当て方が口腔機能の発達を助け、間違った当て方が口の育ちに影響することがあるとされています。

やりがちなNG例

  • スプーンを口の奥まで深く入れてしまう
  • スプーンを上あご(天井)に向けてこすりつけるように食べさせる
  • 赤ちゃんが口を開ける前に食べ物を押し込んでしまう

スプーンを奥まで入れる与え方が続くと、舌が前後に動くだけになり、舌の上下・左右の動きが育ちにくくなるとされています。また、上唇を使う機会が減り、口唇を閉じる力が育ちにくくなる可能性も考えられています。

口の育ちを助けるスプーンの当て方

  • スプーンを下唇の上に水平に置き、赤ちゃんが自分から口を持ってくるのを待つ
  • 上唇が下りてきてスプーンをぬぐい取ったら、水平に引き抜く
  • 口を閉じてから飲み込むのを確認してから、次の一口へ

この方法では、赤ちゃんが上唇を使ってスプーンから食べ物を取り込む動きが自然に生まれ、口唇の力や飲み込みのパターンが育ちやすくなるとされています。小さめで浅いボウルのスプーンを選ぶと、口の奥まで入れすぎを防ぎやすいとされています。

当院では、赤ちゃんの食べ方や口腔機能の発達について気になることを口腔育成・食育のページでご紹介しています。「スプーンの使い方」「食形態の選び方」など、もう少し詳しく知りたい方はあわせてご覧ください。

気になるサインと受診の目安

次のような様子が気になるときは、一度歯科に相談してみると安心です。離乳食の進め方や口腔機能の発達について、お子さまの状態に合わせたアドバイスをお伝えすることができます。

  • 口を開けたまま食べ、うまく飲み込めていないように見える
  • 食べ物をかまずに丸のみしているように感じる
  • 9か月を過ぎても前歯でかじる様子がほとんど見られない
  • 口がいつもぽかんと開いている(口呼吸のサインのひとつとされています)
  • 月齢が上がっても柔らかいものしか受けつけない
  • 食事のたびに大量にこぼれる・食べるのにとても時間がかかる
「口腔機能発達不全症」について

日本歯科医学会では、摂食・嚥下・発音などの機能に問題がある状態を「口腔機能発達不全症」として保険診療で診ることができるようになりました(2018年〜)。早い時期から気づいて関わることが大切とされています。気になるサインがあれば、自己判断せずにご相談ください。

鴻巣市のはぎわら歯科こども歯科クリニックでは、小児歯科の診療のなかで、赤ちゃんの食べ方や口腔機能発達についてのご相談も承っています。「これくらいで相談してもいいの?」と思わず、気になることがあればお気軽にお声がけください。

まとめ——離乳食は「口を育てる大切な時期」

離乳食の進め方は、お子さまの栄養だけでなく、噛む力・舌の使い方・唇の動き・飲み込みのパターンなど、「食べる機能」全体の育ちと深く関わっています。

  • 離乳食の食形態は月齢ではなく「お口の発達段階」から逆算して選ぶ
  • 9か月頃からは「前歯でかじり取る」経験を大切に
  • スプーンは奥まで入れず、自分で口を持ってくるのを待つ
  • 気になるサインがあれば、早めに歯科へ相談を

あせって進める必要はありません。お子さまの口の育ちをやさしく見守りながら、気になることがあればぜひ歯科にご相談ください。

よくあるご質問

離乳食はいつから始めればよいですか?

厚生労働省のガイドラインでは生後5〜6か月頃が目安とされていますが、お子さまによって個人差があります。口を開けてスプーンを受け入れる様子、首がすわっているかどうかなどを目安に、お子さまの様子を見ながら始めることが大切とされています。判断に迷うときは小児科や歯科にご相談ください。

前歯でかじり取りができないのですが、大丈夫ですか?

かじり取りのタイミングや得意・不得意にも個人差があります。スティック野菜など「前歯を使わないと食べられない形」の食材を試してみるとよいとされています。1歳を過ぎてもかじり取りが難しく感じるときや、食べ方が気になるときは、一度歯科でご相談いただくと状態を確認してもらえます。

食べ物を丸のみしているようです。どうしたらよいですか?

丸のみは食形態がお子さまの口腔発達段階よりも軟らかすぎる場合に起こりやすいとされています。月齢に合った少し固めの食形態を試してみることが助けになることがあります。改善がみられないときや、食べることにお子さまが苦労している様子があるときは、歯科や小児科でご相談ください。

離乳食の食べさせ方が歯並びに影響しますか?

スプーンの当て方や食形態が口腔機能の発達に影響することがあると考えられています。舌の使い方や口唇の動きが育ちにくくなると、のちの歯並び・噛み合わせに影響する可能性があるとされています。気になるサインがあれば、お口の育ちセルフチェックも目安にしていただきながら、早めに歯科にご相談ください。

院長 萩原 岳
監修
院長 萩原 岳

はぎわら歯科こども歯科クリニック院長。小児歯科・予防矯正・口腔育成を中心に、お子さまの成長に寄り添った診療を行っています。日本小児歯科学会認定医、日本障害者歯科学会認定医、口腔機能支援士。

本コラムは一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の治療の効果や結果を保証するものではありません。症状やお口の状態には個人差があります。気になる症状がある場合は、自己判断せず歯科医院にご相談ください。

お子さまのお口のこと、気軽にご相談ください

鴻巣市のはぎわら歯科こども歯科クリニックでは、小児歯科・予防矯正・口腔育成を通じて、お子さまの健やかな成長をサポートしています。まずはお口の状態をチェックしてみませんか。